富岡の蔵コンペ開催
本日、アライアンスパートナーのNPO法人福島住まいまちづくりネットワークさんからの依頼で、福島県南会津町に建築事務所を構えるはりゅうウッドスタジオさんが関わっておられる「富岡の蔵」をどうするかを東北大学五十嵐太郎研究室の学生の皆さんに提案していただきました。
「富岡の蔵」は名前にある通り福島県富岡町にある住民の方の蔵で、東日本大震災でご自宅は流されてしまいました。周辺一帯も津波で流されながらもこの蔵だけは残り、この震災では数少ない現存する震災遺構であります。
今回コンペという形で建築を学ぶ学生さんから案を募りました。
その会場となったのは仙台市の沿岸部に位置する新浜地区の個人住宅で、富岡の蔵と同様に東日本大震災の際に津波に襲われ、なんとか生き延び今日まで解体されずに残っている住宅です。
現在はアーティストの佐々瞬(ささ・しゅん)さんが活動の場として借りられております。
コンペでは震災遺構に対する各自の考え方や震災の経験などを踏まえた様々な提案をいただき、質疑の時間では、より深く各案の意図や意義などを議論しました。このコンペはトーナメント形式になっており、最終決戦として残った案は「あえて蔵をそのまま手を付けずに残す」案と、「積極的に変化していく状況に更新しながら意向を残す」案と、対照的な2つになりました。
このコンペの勝者となったのは「積極的に変化していく状況に更新しながら意向を残す」を提案していただいた山口智子(やまぐちさとこ)さんでした。
バーチャルな世界が現実と感じるようになっている現役の学生(建物を見に行かずにネットで写真を見て建物を見たように批評する学生が増えております)にとって、自身が提案するテーマと共有する建物の中でこのような議論が出来、大変貴重な経験が出来たのではないかと思っています。
資料館やネットに収められる情報も大事ではありますが、それらは自ら率先してその情報の存在を知り、それを求めに行動を要することに一つの限界を感じております。一方で物理的な「モノ」が持つ情報量や記号性などは模型や、展示パネル、本では感じ取られない人の感性を刺激する、そして考えさせられる重要な要素を持ち得ていると思っております。
そういった意味で今回のコンペを通した各自の震災遺構、そしてメッセンジャーとしての建物に対する接し方、価値観などは仰る通り、大変興味深いものでした。